印鑑を PDF や Word 文書に追加する方法
午後四時五十分。見積書は今日中に送らなければならず、先方からは「押印のうえ PDF で」と言われている。手元には角印の画像がある。Word に入れると記名欄がまるごと次のページへ飛び、戻すと上の段落が折り返し直して合計金額が二行に割れる。十分後には、白い四角を背負った角印が日付の半分を隠している。
どの問題にも単純な原因があり、どれも印影そのもののせいではありません。ここでは、実際によく使われるソフトごとに印影の置き方を説明し、ファイルが自分のパソコンを離れる前に位置を固定するための確認をまとめます。
始める前に:透過していて、サイズが合ったファイル
配置がスムーズにいくかどうかは、二つで決まります。
- 背景が透明であること。 白や色の背景がある画像は、下の文字を隠してしまいます。透過 PNG で書き出し、使う前に暗い背景の上で確認してください。背景が透明な PNG 印鑑の作り方で詳しく説明しています。
- ピクセル数が足りていること。 請求書の角印なら 21〜24 mm 角程度がよく使われます。300 DPI なら 250〜300 ピクセル前後です。足りないと印刷でぼやけます。計算は印鑑のサイズと解像度ガイドにあります。
印鑑ジェネレーターで作った印影なら、一手間省けます。実寸で印影を配置した Word ファイルや PDF を書き出せるほか、ブラウザー上の PDF・Word 押印ツールへワンクリックで渡せます。
Excel の請求書に角印を置く
日本では請求書や見積書を Excel で作る会社が多く、角印をテンプレートに組み込む場面がとても多いはずです。
- 挿入 › 画像 › このデバイス から PNG を選びます。Excel の画像は最初からセルの上に浮いているので、Word のような文字の回り込みは起きません。
- 社名の右端に少し重ねるのが一般的な位置です。社名や住所の文字を半分隠すほど重ねると読みにくくなります。
- 画像を右クリック › サイズとプロパティ › プロパティで、セルに合わせて移動やサイズ変更をしないを選びます。これを選ばないと、行の高さや列幅を変えたときに印影が伸び縮みします。
- サイズ欄で縦横比を固定し、高さと幅をミリではなくセンチで入力します(例:2.4 cm)。
テンプレートに角印を埋め込んだ場合、そのファイルを持っている人は誰でも角印入りの請求書を作れることになります。誰がテンプレートを使えるのかを決めておきましょう。印章の保管と押印管理でこの点を扱っています。
Microsoft Word(Windows・Mac)
Word は画像を「とても大きな一文字」として行の中に入れるのが初期設定です。挿入した途端に文書が組み直されるのはそのためです。画像を文字の流れから外せば解決します。
- 画像を挿入。 挿入 › 画像 › このデバイスで PNG を選びます。
- 折り返しを変更。 画像をクリックし、横に出る[レイアウト オプション](または 図の形式 › 文字列の折り返し)で 前面 を選びます。これで印影がページの上に浮き、文字は動かなくなります。
- 位置を決める。 記名欄までドラッグし、慣習に合わせて社名や氏名の端に少し重ねます。Shift を押しながら角をドラッグすると縦横比を保ったまま拡大縮小できます。
- サイズを正確に。 右クリック › レイアウトの詳細設定 › サイズで縦横比を固定し、幅を入力します。
- ページに固定。 レイアウト オプションで ページ上で位置を固定 を選びます。そうしないと印影が段落にアンカーされ、上の文章が編集されると一緒に動きます。
一度だけ変えておきたい設定もあります。ファイル › オプション › 詳細設定 › イメージのサイズと画質 › ファイル内のイメージを圧縮しない。Word は保存時に画像を圧縮するのが既定で、くっきりした印影がにじむことがあります。
全ページに押したい場合は、本文ではなくヘッダーやフッターに入れます。元の Word ファイルを触りたくなければ、ブラウザー上の Word 押印ツールで、.docx の任意のページに印影を置いたり、ヘッダー経由で全ページに繰り返したりしてからダウンロードできます。
PDF に印影を追加する
PDF はもともと編集を前提にしていないため、既存のページの上に画像や注釈を重ねることになります。方法はおもに三つです。
ブラウザーで、インストールなしに。 PDF 押印ツールは PDF を手元で開き、ドラッグで位置を決め、サイズと不透明度を調整し、1 ページだけ・全ページ・ページの境目にまたがる割印のいずれかを選べます。書き出し時には印影を PDF に統合します。ファイルはアップロードされません。手順は Acrobat なしで PDF に印鑑を押す方法にあります。
Adobe Acrobat Pro。 「PDF を編集 › 画像を追加」で PNG を配置します。同じ印影を何度も使うならスタンプツールでカスタムスタンプを作る方法もあります。便利ですが、カスタムスタンプは注釈なので、受け取った側が Acrobat で選択して削除できます。必要ならフラット化してください。
Mac のプレビュー。 印影の PNG をプレビューで開いてすべて選択・コピーし、PDF を開いて貼り付けると、ドラッグや拡大縮小ができるオブジェクトとして置けます。最後に別名で PDF を書き出します。
どの方法でも、100% 表示で印影が金額・日付・署名・印字された氏名を隠していないか確かめてください。
全ページへの押印と割印
取引先によっては全ページへの押印を求められます。複数ページの契約書では、ページの差し替えを防ぐための契印や割印を求められることもあります。
- Word で全ページ: ヘッダーかフッターに入れるか、Word 押印ツールの全ページ設定を使います。
- PDF で全ページ: PDF 押印ツールの「全ページ」で、各ページの同じ位置に押せます。
- 割印・契印: 印影をページ数に合わせて分割し、紙を広げたときにつながるようにする必要があります。手作業は手間がかかり間違えやすいので、PDF 押印ツールの自動分割を使うのが確実です。
契約書・請求書・証明書での一般的な押印位置はデジタル印鑑の配置ガイド、契約書特有の作法は契約書と印鑑で解説しています。
送る前に固定する
編集できる Word ファイルの上に浮いた印影は、開いた人なら誰でも動かしたり消したりできます。相手の Word のバージョンでレイアウトが変われば、位置もずれます。
- PDF に書き出す。 ファイル › 名前を付けて保存 › PDF。画像が劣化しないよう「最小サイズ」ではなく「標準」を選びます。
- 別のビューアーで開く。 ブラウザー内蔵の PDF ビューアーで十分です。印影が置いた場所にあるか、下の文字が隠れていないか確認します。
- ファイルサイズを見る。 1 ページの PDF が十数 MB になっていたら、印影の画像が大きすぎます。必要なサイズで書き出し直してください。
相手が編集可能な Word ファイルを求めている場合は、印影が必要かどうか先に確認しましょう。押印は最終版の PDF だけでよい、ということも多いものです。
よくあるトラブル
- 印影に白い四角が付く: JPG か、背景付きの PNG です。透過 PNG で書き出し直します。
- 文章を直すと印影が動く: 段落にアンカーされています。「前面」と「ページ上で位置を固定」にします。
- 印刷でぼやける: ピクセル不足か、Word の画像圧縮です。大きめに書き出し、圧縮をオフにします。
- 貼り付けたように見える: 2〜5 度のわずかな傾き、記名への少しの重なり、普通の朱肉の濃さのほうが、真っすぐで大きすぎる印影より自然です。
- 印刷すると薄い: 純粋な赤を薄く出すプリンターがあります。印影を大きくするのではなく、テスト印刷して色を調整します。
印影を置いても変わらないこと
印影の画像を置けば、書類は押印されたように見えます。しかし誰が置いたかは証明できず、その後の改ざんも防げません。日常の見積書や送付状なら、相手もそれ以上は求めていないことが多いでしょう。法的な効力が必要な書類には、正式な署名の手続きを使ってください。どこに線があるかは印鑑の画像に法的効力はあるか?と電子印鑑と電子署名の違いで解説しています。
準備ができたら、印鑑ジェネレーターで印影を作り、文書に必要なサイズで書き出してください。